カオサン通り
アジアを旅する、いや世界を旅する旅行者にとって、バンコクといったらカオサン、というような気がしないでもない。
それくらいカオサンは有名である。
それとともに、世界からやってきた旅人の数がやたらと多いのもカオサンの特徴だ。
また、その旅人たちの人種や国籍のバラエティーに富んでいるのも特徴の一つだろう。
だが、私はこのカオサンというものにあまり魅了されなかったということを、ここに正直に書き記しておく必要があるだろう。
確かに、カオサンには安宿がある。
屋台の飯の値段もそれなりに安い。
必要なものは何でもかんでも揃う。
例えば、でかいリュックサックが必要になったり、あるいはスーツケースを一個新しく手に入れたいなあなんてときも、かばん屋がいくらでもあったりする。
何でも揃っていて便利な街なのである。
だが、カオサンで不便を感じたのは、中心街からの距離の遠さであった。
私はスクンビットの通りであるとか、サラデーンの街並み、あるいはシーヤム・スクエアの近辺などに行くために、カオサンからわざわざバスに乗っていかなければいけないということについて、かなり不便さを感じていた。
バスは頻繁に走っていたけれども、それでも、バンコクの中心街からカオサンに戻ってくるのに、夜はあまりバスが走っていないことがあった。
バスに乗るために、夜中の人のあまりいないバス停で一時間待ちということなどは、ザラにあることだった。
タクシーに乗ることも出来たし、実際にタクシーもよく利用したが、ホテルから歩ける範囲内に街の中心街が無いという事実は、これは最初、ストレスを溜め込む原因になった。
というのは、観光に出かけてから、「ちょっとホテルに帰って一休み」、あるいは、「ホテルで昼寝」ということが、カオサンに宿をとっていると出来ないのである。
貧乏旅行で昼寝を存分に楽しむということは、貧乏旅行の一つの楽しみであると思うのだけれど、それにもかかわらず、その昼寝の楽しみが奪われてしまい、ホテルでのんびりダラダラという時間の使い方がしにくいというのは、とても残念なことなのである。
カオサンに泊まるかわりに、スクンビットあたりの安いサービスアパートメントでも借りて長期滞在という風にすれば、交通の便もかなりよかったはずである。
また、カオサンという街が、あまりに人工的過ぎるというのも問題の一つだった。
確かに、色々な店があって便利ではあるし、旅人も多くてそれだけで雰囲気は盛り上がるので楽しいことは楽しいのだけれど。
でも、やっぱり、バンコクらしさ、真のタイの魅力、アジアの熱気みたいなものは、おそらく別の街に行かないと体感出来ないのではないか?という気がしたのだ。
だが、それでも私はカオサンのバーでゆっくりと、旅で知り合った仲間と酒を飲むこともしたし、カフェーで甘ったるいアイスコーヒーやらフルーツジュースなどを飲みながら、旅話に花を咲かせたこともあった。
カオサン通り周辺というのは、それなりにやっぱり居心地のいい空間なのかなあとも思えてくる。
しかし、カオサン通りの近くに宿をとってしまうと、夜中でも大音量で音楽が聞こえてきたりして、眠るに眠れなかったりするので注意が必要だ。
カオサン通りのあるエリア、バンランプーのエリアというのは結構ひろくて、バンランプーの端っこのほうに行けば、静かで居心地の良い安宿が、かなり多く存在するようである。
まあしかし、カオサンが好きになるかどうかというのは、もうこれは好みの問題であると思う。
通人を気取って、カオサンをへんに批判するのはやめておこう。