バス遊び
作家の下川裕治氏の著作を読むと、「バス遊び」という言葉が出てくる。
バス遊びというのは、行き先を定めず、バスに乗り込み、自分の気に入った場所であるとか、あるいは終点まで乗っていく、、、という遊びらしい。
私も「バス遊び」をバンコク滞在中にやってみた。
やってみるとこれは究極の暇つぶしであることがわかる。
長期旅行者でしかおそらくやらないであろう、ある意味ぜいたくな遊びだ。
もうバスの番号も忘れてしまった。
たまたま乗り込んだバスで行き着いたのが、バンコクにあるリンデンだか、何だかという街であった。
街の名前ももう覚えていない。
しかし、バスを降りるとその街はやたらと庶民の生活の臭いというものが、風景と一緒になって飛び込んでくるというとても人間臭い街であった。
道幅がやたら狭い。
商店がところ狭しと並んでいる。
細かいソイには、アパートがいくつもいくつもあるように見受けられる。
歩道など無かった。
歩くのに注意しなければ自動車やバイクにひき殺されてしまうのではないか?と思ったほどだ。
その街でやったことといえば、1時間300バーツのオイルマッサージ屋に入ったことと、もう一つはやたらと激安のインターネットカフェに入ったことくらいである。
マッサージ師の女性は片言の日本語を操る人で、どうやら日本人と交際したことがあるらしい。感じのいい女性であった。
日本人がその街に来ることがとても珍しいことらしい。
私も最初、「なぜ、この街に来たのか?」と何度も質問された。
といっても、バス遊びをしていたらたまたま来たのだといっても、なかなか理解されないことであろう。
観光地でない場所に行くことが出来るという意味でも、バス遊びは価値があると思う。
といっても、バス遊びをしている最中、「一体、このバスはどこに行くんだろうか?」と思いをめぐらしている時というのは、心が少しばかり不安になるということも書き留めておかなければなるまい。
どんなにバンコクから遠く離れても、最悪の場合、タクシーに乗って自分の泊まっているホテルに帰ってくればいいというのが、このバス遊びの気安さである。
幸い、タクシーの料金もそれほど高くない。
それでもやはり、自分の知らない街を歩くというのは、楽しくもあり、また不安でもある。
バス遊びを何度かやっていると、街の全体像というのが自分なりに何となくつかめてくるから不思議だ。それでも、バンコクはとても広いと思う。人も大勢いる。
バス遊びはおそらく、他の遊びにも応用できるだろう。
すなわち、トラム(路面電車)のある街であれば、「トラム遊び」という風に。
昔、ヨーロッパの街でこのバス遊びと似たような遊びをやってみたのだけれど、バンコクのバス遊びは格別に面白いものだと思った。
これはなぜだろう?
風景が変化するというのは同じことのはずなのであるが。